2022.05.10
【エートゥジェイ飯澤代表登場①】ソフトクリエイトHDへの会社売却事例を深堀ります
目次
今回は、M&A BANKさんとのコラボ企画!ブルームキャピタルの支援で会社売却を成功させたAtoJ(エートゥジェイ)社の飯澤社長を招いて「成功する良いM&Aとは?」というテーマで話をします。
出演者の経歴
〇飯澤 満育(いいざわ・まいく)氏 株式会社エートゥジェイ代表取締役社長
米Value Click Brands, Inc.にてショッピングサーチエンジンの日本法人設立に参画、主に大手クライアント開拓などセールス&マーケティング業務に従事。同社が買収された後、株式会社エートゥジェイを創業し代表取締役社長に就任。コンテンツマーケティング、ECサイト構築、運用などで規模を拡大し、2018年にM&Aによりソフトクリエイトホールディングスに株式を売却。
〇島袋 直樹(しまぶくろ・なおき)氏 M&A BANK株式会社 取締役会長
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡し、2018年3月よりM&A BANKの運営を開始。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。
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~前編~
動画の書き起こし
<宮崎>
こんにちは!ブルームキャピタルの宮崎です。今日は、私が顧問をしているM&A BANKさんとのコラボ企画で、前半をM&A BANKさん、後半を弊社chで公開いたします。テーマは売主・買主・対象会社・社会の成功「四方良しの M&A 」についてです。
M&A BANKの会長の島袋さん、弊社の過去のお客さんでエートゥジェイという会社を売却された飯澤さんの御二人に本日はお越し頂いております。飯澤さんは、2018年にソフトクリエイトホールディングスという上場企業に株式譲渡で会社を売却されましたが、おそらく全ての利害関係者がハッピーになった事例の1つかなと感じているので、出演依頼をさせていただきました。
0110 御社の株式譲渡案件の成功の秘訣は?
<宮崎>
まず、私から質問させていただきますが、今回のM&A案件の成功の秘訣は何だったとお考えですか?
<飯澤氏>
特に、1年程の入念な売却準備期間を設け、自社のシナジーの創出源泉を見極めたり、買主グループの事業分析を十分に行い、自社と組むことで買主側で見込まれるシナジーを割り出したりと、かなり時間をかけて丁寧な議論を積んだことが、適切なM&A提案を実施できた要因だと思います。
当然ながらシナジーは打率の様なものなので、一連のM&Aプロセスを通じてその打率の向上を実現できたことが、M&A後でも凄く順調に事業活動を続けられている秘訣だと感じています。
<宮崎>
飯澤さんとは、青山のBlooming Gardenというレストランで、相当何版にも亘ってExcelを使って2人でシミュレーションしながら議論しまして(笑)
<飯澤氏>
(笑)
<宮崎>
当時の検討の一部は実際に実現したりしましたが、そういったシナジーの協議は極めて大事ですよね。セルサイドFAという立場で関与した私目線では、実務的なM&A交渉のやり方など色々な話をさせていただいたと思うのですが、事業家の飯澤さん目線では「シナジーの見極め」がM&A案件のキーポイントとして印象に残っているということですね。
<飯澤氏>
そうですね。
<島袋氏>
ふむふむ。
<宮崎>
そういう成功のM&Aを私はずっと作っていきたいなと思っているんですけど、そもそも成功のM&Aとは何かについて、島袋さんと我々の今回のディールを材料にディスカッションしていきます。島袋さんに何個か事前に質問をご用意していただいたので訊いていただければと思います。
<島袋氏>
はい、了解です。改めまして、皆さんこんにちは!M&A BANKからこの会社売却道場に道場破りにやって来た島袋でございます!というノリで大丈夫ですよね?(笑)
<宮崎>
最高です(笑)
<島袋氏>
みなさんチャンネル登録、これマストですからね!視聴者のみなさんも定期的に道場破りに来てください!グッドボタンも絶対お願いします。
<宮崎>
ありがとうございます(笑)
<島袋氏>
と、いう熱いノリで撮影した前半用の動画はM&A BANKの方で放映し、後半はこの会社売却道場の方で放映されます。宮崎さんのチャンネルに初めて出演しますが、こんな感じで大丈夫ですよね?(※2回目)
<宮崎>
押忍。よろしくお願いします。
<島袋氏>
皆さんちなみに宮崎さん滅茶苦茶空手強いですからね、あんま関係ないですけど(笑)ということで飯澤さん先程はM&A BANKの動画撮影ありがとうございました。
<飯澤氏>
こちらこそ、ありがとうございます。
<島袋氏>
僕から3つ訊きたいことがあります。
1.売却活動開始前から具体的に何を準備してきたのか?
2.ソフトクリエイトホールディングスさんにどの様なシナジーの訴求をしたのか?
3.そもそも良いM&AはどんなM&Aだと捉えているか?
<島袋氏>
運営主の宮崎さん、こんな感じで大丈夫でしょうか?
<宮崎>
はい大丈夫です。
0418 1.売却活動開始前から具体的に何を準備してきたのか?
<宮崎>
1つ目はプレディールでどういう売却準備をしたかって話ですよね。
<島袋氏>
そうですね。
<宮崎>
売却当事者の飯澤さんから話していただいて、その後私が補足する感じで話しましょうか。
<飯澤氏>
わかりました。一番印象深いのはプロジェクション(Projection)を凄く厳密に構築して頂いたというところかなと思います。過去の実績のことは、買主候補側に決算データ(財務資料)をディーデリ(DD)して頂くにあたって売主側がちゃんと提出することは当然だと思います。
ただ、ここから先の自社の未来を予測すること、それも一緒になった前提という条件付きで、未来予測モデルであるプロジェクションの構築をどこまで真摯に描けるかということが大事だったと今になって思うので、当時それを時間を掛けてやった準備物の中では一番印象に残ってます。
<島袋氏>
なるほど。ところでプロジェクションって何ですかね?
<飯澤氏>
今後将来の事業計画の様なものです。たとえばM&A取引から、1年後、2年後、3年後、…それぞれの事業年度で「御社のグループ会社として参画することになった時には、こうありたい」、「この事業をこう伸ばしたい」ということを、定性的に事業計画書で書くことは凄く簡単だと思います。
ただ、それを定量に落として、「〇年後のマーケット規模がこれぐらいだから、一緒になったら✕%のシェアなら取りに行けるかもしれない」という書き方での訴求は中々難しいと思うんですよね。
今でも実際グループ入りしてからも、この企業グループの中で事業を伸ばすにあたって、「そういえば、ここの部分っていうのはもう少しシナジーを出す余地があるな」、「ここは当初の予定(プロジェクション)通り一緒に事業を進められているな」というのは、PMI(買収後統合作業)の1つの指標になるので、プロジェクションを精緻に練れたことは凄く良かったなと思っています。
<島袋氏>
なるほど。そこは宮崎さんからアドバイスを受けながら作っていくんですか?
<飯澤氏>
ゴリゴリなアドバイスを受けました(笑)
<宮崎>
ゴリゴリでしたね(笑)
<島袋氏>
なるほど(笑)
<宮崎>
お互い大変だったですよね。
<飯澤氏>
(笑)
<島袋氏>
宮崎さん、これも訊きたいです。事業計画書や予実管理表などを経営者は銀行に提出したりする場面があると思うのですが、それをM&Aで「プロジェクション」として作る場合って何か変わった作り方、意識するポイントなどあるんですか?
<宮崎>
予測財務モデル(プロジェクション)の基礎指標の組み合わせ(例:販売数×単価)だけならExcel自体を作るのは簡単なんですが、それぞれの基礎指標に当てはめる数字の説明がどれだけ深くできるのかが難しいところで、投資家(M&Aの買主)という立場の人達が相手になると、プロジェクションの妥当性をもうゴリゴリ検証していくわけですよね。
「本当に将来この成長率が実現されるの?」「この成長率を維持するなら、この人員計画じゃ駄目なんじゃないの?」という感じで見られるわけなので、売主側が構築したプロジェクションの妥当性を一気通貫で買主に説明できるかどうかを、飯澤さんと相当議論して作ったんですよね。
それって結局机の上だけで完結する話ではなくて、生のデータを色々調べなきゃいけなかったり、業界に精通した第三者の話や現場の社員の意見も取り入れなきゃいけなかったり、妥当性を持たせるために様々なやるべき作業があるわけです。ここはM&Aのモデルは、他の目的で構築されるモデルとはまた違うポイントかなと思いますね。
<島袋氏>
なるほど。なるほど。それでいくと、起業家(売主)は高く売却したいと思うものなので、高めの強気設定が前提に置かれる様な気がするんですけど、セルサイドFAの宮崎さんの役割は、それを抑えにいく感じですか?それとも・・・
<宮崎>
それは明確で、抑えるケースも、もっと高く提示するケースもあるんですけど、要はM&A後の未来が100回あると仮定した時の一番中間的な未来(最も起こり得る未来)というのが、教科書的な本来の正しいプロジェクションなんですよね。
しかしながら、中には下方にブレるのは避けたいから敢えて絶対達成可能な未来を交渉の前提にしている人もいて、そういう人がお客さんになった時には「いやいや、中間的な未来を前提に作るのが正解ですよ」と教えたりします。
もっと言うと、M&A交渉では買主側が必ず安くなる様に叩いてくるので、それを考慮して、頑張れば伸ばせるかなという若干強めの設定ラインでプロジェクションを策定することも売主側としては検討の余地があるかもしれないです。
<島袋氏>
ふむふむ。
<宮崎>
あとは何年先までの精緻な予測を作るのかという議論も大事だったりします。どれほど作り込んでも、「取引成立後5年間の予測CFは価値として認識するけど、5年後以降はわからないから全部0で見る」という買主企業の中にはいるんですよ。
この考え方は間違っているんですが、将来を読みにくい事業を行っている会社なら、買主側がそう言いたくなる気持ちもわからなくはないですよね。ただ、ある程度読める事業であれば、成長が安定する所まで精緻な事業計画を売主側から書いてあげた方が納得してもらいやすかったりします。
また、交渉のテクニックとして「5期目終了日以降のCFは全て0」と言われたら、「5年目までのCFは評価して頂いた前提で、それに5期目終了日時点で会社を売却した時の評価額を加算してください」って言えばいいんです。
<島袋氏>
というと?
<宮崎>
私の話が今ズレちゃって、もともと「事前準備・プロジェクションが大事ですよ」という話をしていたんですが、そこでは、明確な根拠でプロジェクションを組むこと、将来を読みやすい会社であれば安定期まで事業年度ごとに個別に事業計画を描く方が良いことなどを述べていて、そこから補足的説明に脱線するのですが、〇年後までしか予測が困難な会社もあるじゃないですか。
その様な、中々プロジェクションを作るのは難しい事例もあるので、一概に設定が強気か弱気かだけで済む論点として整理できないというのが、プロジェクション構築時にセルサイドFAとしてするアドバイスなんですけど。
ここから事前準備から交渉の話に移り、「5期目終了日以降のCFは全て0」と言う様な買主が実際にいるので対処法を話すと、「本案件で、5年間御社に帰属するCFの割引現在価値+5期目終了日に転売する前提で評価してください」と売主側として言うべきという話になります。
<島袋氏>
あーなるほど。実際そうですしね。
<宮崎>
実際そうじゃないですか。5年で会社の価値が0になる訳ないので、その様な買主の話は売主として受け入れちゃ駄目ですよという話です。
<島袋氏>
それって上場企業が「のれん償却」の問題で、「5年以内までのバリュエーションでしか見れないんですよね」と言われた時の対処法としても使えますよね。
<宮崎>
本来、「のれんの償却で手痛い」というのと「株式の資産の価値」は全然違う概念の話なので、買収後早めに黒字転換させたいのは解るんだけど、私(売主)が保有する株式の価値はこれ位あるので、ちゃんとした提示額を出してくれないと納得できないという話になる訳です。
<島袋氏>
そうですね。確かに面白い。
<宮崎>
話逸れましたけど、プロジェクションが大事だったと言うことでしたね(笑) 他に準備したことって言うと飯澤さんのディールの場合は若干特殊で前半編でも言いましたけど、もともと「3年後に会社売却するプロジェクト」みたいなものだったんですよ。
それまでの間に色んなことをしたってのはあって、先程少し触れましたが、開発力をもう少し強めたかったのでベトナムに行って、ベトナムの…オフショアでしたっけ?
<飯澤氏>
オフショアですね。
<宮崎>
海外の会社を買収しに行ったりしました。結局それ条件合わなかったんですけど。他にも色々な売却準備をしてことが結局成功に結びついているかなって気がしますけどね。
<島袋氏>
なるほどですね。じゃあ次の質問行きます!
<宮崎>
はい。
(次回に続く)
続きのコンテンツのご紹介
後編②の動画の書き起こし記事
https://bloomcapital.jp/dojo/13945
後編②のYouTube動画