会社売却コラム

2022.05.11

【M&A BANKコラボ 後編②】現役ファンドマネージャーをゲストにお迎えし、バイアウトファンドの気になる実態をお伺いしました~泥臭い人間ドラマ・仕事の魅力など~~

今回は、匿名ゲストをお呼びしてバイアウトファンドについてお話してもらいました!

※こちらは後編②になります。

出演者の経歴

〇M氏 匿名ゲスト

某バイアウトファンドの現役ファンドマネージャー(MD)。

 

〇島袋 直樹 氏

M&A BANK株式会社 取締役会長 シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡し、2018年3月よりM&A BANKの運営を開始。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。

 

関連動画のご紹介

~前編①~

 

~前編②~

 

~後編①~

(また、後半編①のYouTube動画の書き起こし記事はこちらです。)

動画の書き起こし

00:22 PEあるある?泥臭い人間ドラマの話

<島袋氏>

 今まであった凄いトラブルだったり、あんまり公には言えないよ、みたいな話がもしあれば訊きたいです。

 

<M氏>

 そうですね…バイアウトファンドっていうのはですね、主に非公開会社の株式をお引き受けする訳ですが、その投資対象会社の経営支配権のマジョリティ(株式の過半数)を取得させて頂くんですが、ここに非常に大きなハードルがあるんですね。

 

 バイアウトファンドが投資したい会社っていうのは、まあ有り体に言うと、安定している「良い会社」な訳で、株主さんからしてみれば良い会社の株式は継続保有し続ければ安泰なので、売る理由がそんなに無かったりするんですよ。

 

 なので、バイアウトファンドの投資案件化するということは色々事情がある会社さんの方が体感的には多いですかね。単純に後継者がいらっしゃらない等の綺麗な理由もあるんですが、それ以外の理由みたいなのも結構多いのが実態ではありますね。

 

<島袋氏>

 綺麗じゃない理由ってどんな感じですか?”たとえば”で、大丈夫ですよ。

 

<M氏>

 まあたとえばですね、一番多いのは兄弟で揉めてる等の「骨肉の争い」のケースです。兄弟仲が悪い家っていうのもあるでしょうけど、まあ一般的に兄弟っていうのは仲良くできるものだと思うんですが、巨大な財産が絡んでくるとですね、兄弟であるが故に憎さ100倍みたいな事になって上手くいっていない事例が多いですね(笑)

 

 兄弟のどちらかが会社の主導権を握りたい訳なので、相手方を締め出すというか、パージすると思うんですが、そうすると非公開株式なので追い出された方が売るに売れないみたいな状況になります。

 

 もの凄い価値のあるものだが買手が付かないといった株式を持ってしまっていて、会社に買取請求なんかを掛けたりするんですけど、会社に残っている方は、あまり会社のお金を使いたくないので「そんな物は買わない!」と押し返してしまう、まあ、そんなことで塩漬いてしまった人達がファンドに「兄弟分まとめて買ってくれ!」みたいなお話が来ることは多いですね。

 

<島袋氏>

 あっ多いんですね。

 

<M氏>

 そうですね。

 

<島袋氏>

 でもバイアウトファンド側からすると、逆にその話ってオイシイものじゃないんですか?

 

<M氏>

 そういう投資案件の方が良い投資案件になりやすい要素はあります。まあ勿論、投資実行までの入口は物凄く大変で、複雑な人間ドラマがあってそこを乗り越えていかなきゃいけない等の問題があるんですが、だからこそ「そこに魅力・働き甲斐を感じる」面もありますね。

 

<宮崎>

 僕も過去そういう経験ありますけど、締め出されそうになった人から相談が来た場合、対立している相手もちゃんと説得しないとM&A 案件自体が進まない要素も意外にあるじゃないですか。

 

<M氏>

 はい。

 

<宮崎>

 そういうのって結構時間かかったりしますよね。

 

<M氏>

 宮崎さんみたいな凄腕セルサイドFAがいると…

 

<宮崎>

 (笑)

 

<M氏>

 対象会社の株主さんを上手く纏めて頂けるので助かりますかね。

 

<宮崎>

 なるほどね。あと良く聞くのが、上場企業など事業会社が買い手となる場合って、綺麗な会社しか買えないという話。

 

<M氏>

 はいはい。

 

<宮崎>

 だけど、バイアウトファンドさんがちょっとこう…ダーティな対象会社っていう表現は不適切かもしれませんが、まあそういう諸問題を抱えた会社を買って、ファンドの名前で綺麗にしてから売るみたいな事も頻繁に耳に挟むじゃないですか。そういうのって実際にご経験あるんですか?

 

<M氏>

 あぁ…やっぱり色々ありまして。一番多いのは良い会社なんだけれども、社長に犯罪歴があるというケースですね。

 

<宮崎>

 あー、はいはい。

 

<M氏>

 犯罪も色々あって、脱税みたいな金銭に絡むものと、あとは痴漢とかですかね。

 

<宮崎>

 痴漢⁉

 

<M氏>

 他にも女性問題系があったり、薬物だったり、その辺が多いですかね。で、そういう方でビジネスとしては非常に良いんだけれども、事業会社の買手が付きづらいといった会社様をお引き受けさせて頂いて、しっかりガバナンス等を整えて、M&Aのマーケット等に出していくといったことが、あまり大きな声では言えませんが、ファンドの大きな役割の1つかなという風には思います。

 

<島袋氏>

 それはよくブリッジファンドって俗に言われる、一回ちょっと挟んでまた直ぐ違うファンドに売却するっていう様な役割を担うってことですか?

 

<M氏>

 違いますかね。そのブリッジファンドみたいな人っていうのは、単純にお金の出し手が瞬間的に見つからなかったものを一回抱いてあげるという仕事だと思うんですが、バイアウトファンドでやる経営者さんの会社のレピュテーション含めたところのロンダリングっていうのは、もっと経営の中に入って、しっかりと社会との関係を良いものにしていくお手伝いというところですかね。本当の意味での”会社を良くする活動”を担っていると思います。

 

<宮崎>

 そういうダーティな会社の投資案件の場合、銀行さんとかもLBOローンは出してくれるものなんですか?バイアウトファンドさんがちゃんとしていれば。

 

<M氏>

 そこが…そうですね。中々難しいところで、私も銀行さんからその手の話でLBOローンが出なくて泣く泣く諦めたっていう投資案件もいくつも経験していますが、それでも上手く案件化できるファンドさんっていうのも結構あって、傾向的に言えば外資系のバイアウトファンドさんの方が躊躇なくやられておりまして。

 

<宮崎>

 あー確かに。

 

<M氏>

 結果的にバリュエーションも低く抑えられているので良い投資になっているといったケースが傾向としてあります。

 

<宮崎>

 逆に外資のバイアウトファンドの場合、反社会的勢力みたいな所になってくると厳しくなったりしませんか?

 

<M氏>

 外資の場合、反社っていうよりかは「マネーロンダリング」には非常に厳しいですかね。

 

<宮崎>

 あ~そうなんですね。

 

<M氏>

 あとは「児童性愛」的なヤツですかね。まあ外資っていうのは西洋を母体とするファンドが多いので、欧米の価値観で言うところの禁忌に当たる様なことをやっている社長は…

 

<宮崎>

 厳しいと。。

 

<M氏>

 でも逆に、脱税とか薬物には割と寛容なんじゃないか?という気もします。

 

<宮崎>

 いや~でも島袋さん、本当にそうなんですよ、外資のファンドさんとかの最終契約の表明保証条項とかって、日系のファンドのそれとは全然違ったりするんですよ。出資者のうち海外投資家が占める割合が高いファンドさんとかもそうなんですけど、なんか面白いというか変な表明保証だったりするんですよね。

 

<島袋氏>

 いや面白いな…

 

05:35 バイアウトファンドの仕事の魅力

<島袋氏>

 あの~バイアウトファンドの仕事の魅力って何なんですかね?

 

<M氏>

 そうですね。これはまあ、私がこのPE業界に来た頃の話なんですが、もともと大企業で同じ様な投資をしていたんですけれども、大企業だとやっぱりこう…”会社を良くするポイント”っていうのが分かっていても、組織の力学でそれをやり切れないといった不満があったりするんですけれども、そこを株式のマジョリティを持って、自分達がオーナーシップを持って、”会社を良くする”ということを実現できる所が、バイアウトファンドです。

 

 その点に魅力を感じる人は非常に多いんじゃないかなという風に思いますね。バイアウトファンドに入ってみてから、実際に経験してみて、より面白いと感じるところは先程の”人間ドラマ”みたいなところをどう解決していくか?っていうかなり泥臭い話で、そちらの方の魅力みたいなものも今は凄く実感していますね。

 

<島袋氏>

 なるほどね…あの人も言ってましたよね。アシロの中山さんもね。バイアウトファンドさんが入って、性格も変わったと仰ってましたね。

 

<宮崎>

 そうですよね。実際、ファンドに買収された後だけじゃなくて、M&Aディール最中にも売主さんって心が変化するんですよね。やっぱファンドさんと話している内に、そういう良い意味での刺激を受けるっていうのはあるかもしれないですよね。

 

06:47 島袋氏のビジネスの話

<島袋氏>

 あと最後に、超スーパー個人的なんですけど僕がやっている育毛剤の通販と、店舗ビジネスのクラブピラティスとを比較して、バイアウトファンドさんのスコープに入る確率が高いのはどっちですか?

 

<M氏>

 どちらも入るんじゃないですかね?育毛剤も凄く伸びる領域だと思います。マクロ環境の状態に着目しても高齢化してますので、当然に育毛剤を必要とされる消費者っていうのは多くなっていくはずですから。

 

 また、そういう層であれば比較的金銭的にも余裕がありますのでコンプレックスに対してお金を出す方っていうのはかなり多いと思いますので、総論としては面白い業界じゃないかなと思います。

 

<島袋氏>

 じゃあクラブピラティスの方を考えた場合、やっぱり出店コストを下げて早期回収が可能なモデルかどうかっていうのがポイントになってくるってことですかね?

 

<M氏>

 そうですね。クラブピラティスは、おそらくそれ程の設備投資が要らない店舗ビジネスだと思いますので、ビジネスの仕組みが肝になって来るはずで、会員の取り方や会員同士のコミュニケーション、店舗側と会員間のコミュニケーションの取り方などということだったり、他にも物販でキャッシュポイントを作るなど色んな工夫の仕方があると思いますけど、総論としてはバイアウトファンドとして凄くやりやすい事業じゃないかなという風に思います。

 

<島袋氏>

 むむむむむ。分かりました。(笑)

 

<島袋氏>

 という感じですかね?

 

<宮崎>

 ちょっと今日は色々な話が出ましたが、今後もこういうバイアウトファンドに関するテーマも取り上げたいと思うので、また今後ともよろしくお願いいたします。

 

 今日は島袋さん、Mさん、本当にありがとうございました。

 

<M氏・島袋氏>

 ありがとうございました!

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