アーンアウト条項(Earn-out Clause)
アーンアウト条項(Earn-out Clause)とは、M&A契約で頻繁に盛り込まれる価格調整条項の一種で、対象会社又は対象事業がクロージング日後の一定期間に、予め合意した目標を達成した場合には、その達成度合いに応じて、売主は買主から追加的に売却対価を受け取る定めです。
これにより、ベンチャー企業のような「将来の不確実性が高い場合」に双方納得のいく条件で取引を行うことができる可能性が高まります。一般的に、期間基準はクロージング後1年から3年程度と言われており、目標基準には売上高やEBITDA等の財務指標が主に用いられます。
メリット・デメリット
買主側の将来に対する不安が軽減し、かつ売主側も自身が参画することにより生まれる価値の一部を享受でき、かつ売主側にインセンティブが付与されます。
アーンアウトは、設定指標があいまいになりがちで売主側にとって不利な結果を招くことも多いですが、大きな評価額を認めてもらうのと引き換えにこのようなスキームを受諾するというのは1つの選択肢になりえます。
アーンアウトを用いた買収スキームは、将来の不確実性にかかる認識の相違による価格乖離を埋めるよい解決策です。
売主としては、買主から「将来の不確実性が高いのでこの金額しか出せない」と言われないように、案件に応じて適切なスキームを提案できるようにしておきたいものです。
ポイント
なお、アーンアウト契約は一種のオプションペイオフに近いものであると考えられることから、リアルオプション法や二項モデルの考え方を用いて実際に評価することも可能です。
重要なことは、もし現時点で15億円、将来時点で何らかの条件を達成した場合に追加的に5億円が支払われるという契約になった場合、この不確実な5億円は現在価値に割り引くとわずかな価値しか認識できない場合もありえるという点です。
この点は、実際のアーンアウト条項の価値がどの程度かという点をアドバイザー等に算定してもらい、現在価値でみた場合の総額はどの程度かという点も理解したうえで進めることも重要となるでしょう。