【アーンアウトと税務(前編)】みんな知らない意外な事実。M&Aの株式譲渡契約や株主間契約でアーンアウト条項を付ける場合絶対知っておくべき知識を伝授!

目次1 動画の書き起こし1.1 価額調整と税務1.2 二段階買収と基礎的税務 動画の書き起こし  こんにちは。ブルームキャピタルの宮崎です。よろしくお願いいたします。  今日は、「アーンアウト条項(Earn-out Clause)」についてです。    アーンアウト条項とは、M&A取引のクロージング後、業績連動など一定の条件に応じて追加的な売却対価を受領する規定をいいます。売主でも買主でも、アーンアウト条項という言葉を聞いたことがある方は結構多いと思います。アーンアウトスキームに係る重要な論点は「税務」になります。M&A の当事者(売主・買主)だけでなく、M&A支援者も正確に理解しておくことが重要です。税務の話に触れる前に、100%保有のオーナー経営者の株式譲渡を例に、アーンアウトスキームを2種類に分解したいと思います。    1つ目は、「価額調整条項」です。100%株式譲渡のクロージング後、旧オーナー経営者(売主)は対象会社の運営に従事し、2年後に特定の業績目標を達成できたら、ボーナスの様な形で追加対価を受領するといったイメージです。    2つ目は、「二段階買収」です。保有株式の90%の株式譲渡でクロージングさせ、一旦10%保有の被支配株主として残り対象会社の運営にも関与するが、2年後に業績改善に応じて高いバリュエーションをつけて残りの10%を取得し完全子会社化するといったイメージです。    以上が代表的な2パターンになります。では今度は、それらを図を使って解説していきます。   価額調整と税務      まず、1つ目の価額調整条項について解説します。2020年11月に100%の売却をするとします。またその時点で、価額調整条項を付す形で9億円で譲渡対価について合意したとします。その価額調整条項は、2020年11月時点で特定の業績目標が達成されていれば、買主が追加対価を3億円分支払う話でまとまったとします。    この場合の税務をまず簡単に解説します。価額調整分の支払額(3億円)は雑所得という風に判断される場合が多いと言えます。雑所得は、約20%のキャピタルゲイン課税ではなく、総合課税の対象となるので最大で55%の税率が適用されます。このことは案外知られていないので注意が必要です。    これは結局、「価額調整分の支払額は譲渡所得といえるのか?」という視点が税務的な取り扱いを理解する上では重要です。基本的には、色々な事象を勘案して判断されるので、この様な取扱いを巡り税務訴訟も頻繁に起こります。国税不服審判所とかですね。これから詳しく解説していきます。  前掲の図でもあるように再度、アーンアウト条項の定義を価額調整に注目して整理しようと思います。    「M&Aにおいて、買収価額の一部について、初回の取引完了時に確定的に支払われるものとせず、クロージング後一定期間後に、当事者で合意された条件に応じて支払いが行われる(行われない)ものとする条項」    クロージング時に100%売却する場合の原則的な考え方では、クロージング時(①)に1株1万円で売却したとすると、それに基づいて「譲渡対価」と判断され、「譲渡対価」であれば「譲渡所得 … 続きを読む 【アーンアウトと税務(前編)】みんな知らない意外な事実。M&Aの株式譲渡契約や株主間契約でアーンアウト条項を付ける場合絶対知っておくべき知識を伝授!