【アーンアウトで買収!?(後編)】税金の怖い話。M&Aの株式譲渡契約や株主間契約でアーンアウト条項を付ける場合絶対知っておくべき知識を伝授!

売却専門M&Aアドバイザーが、会社経営者向けに「アーンアウト条項(Earn-out Clause)」をYouTube動画で解説!!   こちらは後編になります。前編はこちら。   動画の書き起こし    前編の解説の税務的な論点を整理していきたいと思います。まず、価額調整条項(100%譲渡)によるアーンアウトについてです。   「・クロージング時(初回)に100%譲渡し、条件達成型の価額調整条項を付した場合、将来もらえるアーンアウト対価は絶対に雑所得(55%課税)で将来時点の課税になる?」    前編の私の解説を踏まえると、この様な理解で本当に良いのかと普通疑問に思いますよね。ただ、実はそうとも言えないところが凄く難しい話なんです。    「国税不服審判所 H29.2.2裁決」では、EBITDAを業績基準指標とするアーンアウトスキームが採用された M&A 案件について売却対価の税務的な取扱いが問題とされました。    この不服審判では、旧オーナー経営者側は「業績達成条件は現時点では未確定である」という認識していたのですが、一方で税務署側は、「実質的に権利確定してる様なものであるため現時点で課税すべき」として争われました。    これから当該M&A案件の背景を簡単に紹介していきたいと思います。M&A以前から対象会社のEBITDA(※業績基準指標)も右肩上がりに伸びていたのですが、価額調整の達成条件はそれ程シビアな水準で設定されていなかったそうです。また、他にもアーンアウト対価の設定の仕方も議論になったそうです。    加えて、審査請求人の旧オーナー経営者以外にも、非支配株主が実は存在し、M&A取引の際には共同で計100%の株式譲渡をしていたのですが、非支配株主は条件成就時のアーンアウト対価分もクロージング時に譲渡対価として一気に貰っていたんですよね。    旧オーナー経営者(売主)は売却後も対象会社の運営に携わる訳なので、買主側としては、「もともとの経営陣である売主にはインセンティブを付与し条件達成できるよう尽力してもらいたいな」、「非経営陣の非支配株主はクロージング時にまとめて一括で払うよ」となっていたみたいなんですよ。    結局、担当審判官の裁決では、クロージング時に実質的に権利確定していたと判断され、旧オーナー経営者(売主)に対して、もともと将来受け取るはずだったアーンアウト対価相当額は、現時点の譲渡対価として取り扱われ、約20%のキャピタルゲイン課税が実施されることになりました。    この様な条件達成型の価額調整条項の場合、当該条件が達成されるまでの間、売主のアーンアウト対価の受領権利は停止されており、達成されて初めて、「停止条件」が解かれ受領権利を行使可能となる訳ですが、「比較的容易に達成可能なら、実質的に停止条件は有効に機能していないよね」と判断されたわけです。    個人的には、他の株主(非支配株主)に対して買主が一括で対価を支払っていたことが結構裁決への影響が大きかった気がしますけどね。    まあでも、雑所得と認識され最大55%課税になるなら、逆に良かったんじゃないかとも感じます。要するに必ずしも現時点で課税されな{ … 続きを読む 【アーンアウトで買収!?(後編)】税金の怖い話。M&Aの株式譲渡契約や株主間契約でアーンアウト条項を付ける場合絶対知っておくべき知識を伝授!