会社売却コラム

2022.05.11

【個人M&A】サラリーマンが社長に!?話題の独立手法についてM&Aのプロがわかりやすく解説!

M&A のプロフェッショナルである宮崎が、YouTube視聴者の方からのご要望を受け、最近新な独立手法として話題沸騰中の「個人M&A」について解説いたします。

 

動画の書き起こし

 こんにちは。ブルームキャピタルの宮崎です。よろしくお願いいたします。

 

 今日は最近頻繁に耳にする「個人M&A」をテーマに話していこうと思います。これは、サラリーマンの方などの個人が、小さな会社を買収し、新社長として独立する手法です。個人M&Aについて、M&A のプロとしての見解を訊きたいとのご要望を受け、話してみようと思います。

 

 まず、M&Aの対象となる会社や事業は、一定水準以上大きな規模のものでないと、買主(購入者)側が損する傾向にあると思います。仮に、利益が1~2千万円の会社を買収したとして、その小規模な状況の会社をわざわざ売却しようとしている人は、結構多くの場合、売り手の社長側が自社の将来性が微妙だとの見立てを抱いている背景があります。したがって、小規模買収を実行しても、その後成功している事例を殆ど目にしないのが実状です。

 

 しかしながら、利益が数億円単位で出ているような規模感になってくると、一定水準以上の安定性もあり、事業の市場で十分なシェアを確立しているケースも多いため、M&Aの買主側も成長させやすく、変に崩れたりしない(安定顧客を失いにくい)ことから、M&A市場でも十分な価値が認識されます。

 

 ただ、個人M&Aをよくよく考えてみたら、意外とアリなのでは?と思うに至りました。良く聞くサラリーマンの悩みとして、「独立したいけどネタがない」などという話は散見されて、世の中で成立し得る事業の多くは、規模に関係なく既に色々な会社が手を出していますし、あまり手持ちの資金がない中で、競争の激しい既存市場に新規参入していくのも中々難しかったりします。

 

 その様なスタートダッシュとして小規模な個人M&Aは検討の余地があると感じています。スモールサイズのM&Aであれば、マッチングサイト等で案件情報を調べると出てきたりします。そのため、サラリーマンが予め500~1000万円程度の資金を用意し、マッチングサイト等で300万円程度の会社や事業を買収するのはアリだと思います。

 

 サラリーマンとしてのキャリアを通じて培った、他の人にはない特定の領域に係るスキルやノウハウは、少なからずあるはずです。たとえば、大工さんであれば、「大工の仕事」に関連する知識や技術はプロフェッショナルであるため、大工業界のビジネスモデルも当然理解しているはずですよね。

 

 他にも商社マンであれば、商社でその人が担当している商材の関連領域は知見があったり、事業投資の過程で最低限以上の経営スキルをサラリーマンながらも身に付けていたりしますよね。

 

 貴方の職業ならではの「特有のスキル」や「他の人が知らない知識」などが絶対にあるので、貴方自身の経験等が十分活用可能な事業領域で、小規模な会社・事業を個人M&Aで買収するのは結構アリだと最近感じています。

 

 ただ、間違っても絶対にしてはならないことは、買収後の勝算を深く検討しないまま、「やり始めたら何とかなるだろう…」というM&A取引に関しては私は反対です。

 

 よくいるじゃないですか、『「できるか、できないか」じゃなく「やるか、やらないか」が大事だ!』みたいなタイプの人って。凄く一理あると思いますし、私自身は頭で先に考えるタイプだから失敗が多いのかもしれませんが。

 ではその根性論がM&Aに応用可能かというとそうではなく、たとえば、1000万円貯金がある人がその貯金の半額の500万円を個人M&Aに費やすのであれば、生活との両立等も鑑みると非常にギャンブル的な訳で、後々、「もう少し考えておけば、こんなこと絶対しなかった」と後悔する様な買収投資を、身銭の大半を切ってまでやるべきではないという結論に至るので、将来の見通し・勝てる見込みを深く検討する必要があると言えます。

 

 ただ、サラリーマンとしてのキャリア・経験をもってすれば、何となく勝算は分かるものだと思います。それを突き詰めて考えて調べていくことが大切で、この時のポイントは、色々な人の意見を募ることだと思います。

 

 たとえば、サラリーマンの仕事をしながら、「この様な会社を買収したい」という目星が付き、今までの事業経験やノウハウを活かし「こういったことはできないか」ということを仮説として最初に立てます。実際に検討する際、売却検討中の相手方(社長)に会いに行き、自身の仮説をその社長に壁打ちしたり、社長の話を深く訊くことで、今まで考えていなかった道が選択肢として見出せることもあります。

 

 「こっちの方法であれば自身のノウハウを最大限活用できそうだ」、「こっちの方法であれば今勤めている会社が抱えている課題を、新たな会社の商材で解決し取引関係を確立できそうだ」などということは色々考えられます。

 

 自社を売りに出している社長に会い、コミュニケーションをとってみることで、色々な戦略を描けるかなと思います。

 

 買収価値のある会社や事業をどの様にすべきかという点では、「M&Aをしようかな…」、「後継者がいないから売却に出そうかな…」と相手方の社長が考えていたとしても、マッチングサイトに登録していない場合もたくさんあるので、本気で個人M&Aを検討しているのであれば、HPから電話番号を探すなどして直接社長に連絡しても良いと思います。

 

 「僕が買ったら凄く上手くいきそうだな」、「会社の規模も凄く小さいな」と思える会社があったらリストアップして電話を掛けまくることで、もしかすると意外と良い条件で買収可能かもしれないこともあります。マッチングサイトや紹介会社を頼らずとも、掘り出し物を見つけられる可能性もあるので、試してみる価値はあるかもしれませんね。

 

 また、先ほどの話に戻りますが、「多分いけるかな」という感覚で買収を実行してしまうと上手くいかないことに言及しました。結局、「何かしらの問題を抱え、今以上に業績が伸びないよね」と相手方の社長が考えているケースが大半であることは忘れてはいけません。

 

 勿論、単純に事業承継だけのニーズだけの場合もありますが、事業規模が小さいまま停滞している場合、「何らかの原因」がある訳です。サラリーマンが独立を志す理由は、やはり大きな成功を狙っている背景があると思うので、本当に成功できるか考える必要があります。

 

 たとえば、自動車部品卸売会社のサラリーマンで、またある程度設計にも詳しい職種にいるとして、今後、電気自動車(EV)が自動車市場を席捲するのであれば、リチウムイオンバッテリーや全固体電池などの技術開発力に可能性を見出し、「EV用バッテリーの技術開発に何らかの形で貢献できそうな会社があれば面白そうだ」と考えるに至ったとします。

 

 自身がサラリーマンとしてメインで携わっているのは「部品の卸売」で、本格的な設計・開発の経験が薄くても、周辺の事業領域で補完的に今後伸びていきそうなセグメントを探していくわけです。他の人は、同じ立場に立てないわけですよ。その立場を有効活用する以外の手はないですよね。

 

 太陽光発電のような再生可能エネルギーが普及し、個々の住宅の屋根に太陽光パネルが数多く設置される様な未来を想定したときに、それを売電する際に一度蓄電池に電気を貯める必要があるといった話の中で、良く電気自動車(EV)にも触れられますが、これは、EVのバッテリーをその蓄電池代わりにすると、太陽光など再エネの蓄電池にもなり一石二鳥な訳で、今後その様な市場が急拡大すると見立て、「バッテリーを活用して何か事業ができないか?」などと考えていくと有益な結論に到達できるかもしれないですよね。

 

 総務省が、2031年までに再エネ比率をこれまでの従来計画の22~24%から36~38%に引き上げる方針(第六次エネルギー計画)を打ち出すなど、再エネに関しては国も後押ししているするので、「将来の期待ができる領域にフィットさせられないか?」、「個人M&Aでの買収後、事業を変革する素地があるか?」という視点をもち、「自身のスキルや経験を活用し企業価値創造可能だ」という見立てがあると、小規模な個人M&Aでも凄く有効だと思います。

 

 現実的に考えられませんが、あくまで例として、蓄電池のある技術を研究している会社が数百万の売り案件でM&A市場に出てきているとして、自動車業界全般に人脈を持つサラリーマンであれば、大手自動車メーカーの人達に、その買収検討会社の研究開発技術の将来性に係る見解を上手く買収前に訊き出すことで、「自分が買収して挑戦してみます」でも良い訳ですよ。

 

 凄く将来性があることを自分の今の立場だからこそ判断できて、それに関係する基盤や素地を持っている会社を個人M&Aできるなら、そのサラリーマンだからこそ望ましいことこの上ない買収案件になるわけです。その可能性を見出し、自分の財産の大半を使って買収した後、その将来性をより一層定量的に評価できるようになれば、VC等からも10~20億といった資金調達が可能になる望みも広がっていきます。

 

 険しい道のりであることは否定できませんが、企業価値評価額(バリュエーション)がある程度つくまでに成長させることができれば、自身の持分比率を8~9割の水準で維持しながら、数億~数十億単位の調達もできる可能性も見えてきます。

 

 個人M&Aのポイントとしては、「深く将来を描くこと」になります。それが、他の人にとって見出せていない未来(新規事業)の可能性があるので、その場合は先行者利益を握れ、成功率も上がる可能性があるとも言える。買収後、説得力のある水準まで成長させられれば、資金調達も現実的なものになってくるので、この様なアングルでの検討は面白いかなと思います。

 

 実際みなさんの目で見て、「この領域を掛け合わせれば凄く将来伸びるよね」と確信できるビジネス案があれば、「〇〇業界 動向」や「10年後の経済」などで検索し、「他の人が将来性をどの様に分析しているか」等を調査した方が良いと思います。

 

 勿論、調査すべき内容は皆さん御自身で考えていくしかないと思いますが、それらをかなり深く調査し意思決定し、勝算が見えたら最後はリスクを取って挑戦する、という決め方で良いと個人的には思います。

 あと、テクニカルな話に触れるのであれば、会社の買収(株式譲受)ではなく、「事業の買収(事業譲受)」をした方が買主の立場でリスクが少ないケースもあります。したがって、「事業譲渡という形でお譲り頂けませんか?」という提案をしてみても良いかもしれません。

 

 具体的なイメージを説明すると、まず、サラリーマンの方が自身の株式会社を設立し、そこに買収資金や今後の運営資金を入れます。次に、その新しい会社に対して、相手方の社長から株式譲渡をしてもらうのではなく、当該社長の株式会社(法人)からM&A対象事業を切り売りしてもらい、当該法人にサラリーマン自身の会社(法人)名義で買収対価を支払います。

 

 この場合、買主(サラリーマン)側にとって、税務的なメリットがあり、資産調整勘定(税務的なのれん) を5年くらいに亘り償却できたり、また事業譲渡の契約次第では当初問題視されていたリスクを上手く切り分けたり排除すること等ができます。したがって、個人M&Aの場合、事業譲渡は有力な選択肢として有り得るかもしれません。

 

 勿論、事業譲渡の場合のデメリット等も十分比較検討する必要もありますけどね。相対的に色々な調査に費用を使わずに買収検討費用を抑えられる効果もあるかもしれません。

 

 まあ、そんなところですかね。今日は私が個人M&Aについて感じたことを話してみました。ご視聴ありがとうございました。

タグ一覧
#【Web版】優良動画コンテンツの書き起こし記事

動画で学ぶ
会社売却

週間
宮崎レポート

M&A用語
データベース

『会社売却とバイアウト実務のすべて』書籍サポート

会社売却道場
トップに戻る