会社売却コラム

2022.05.11

IPO用のプレディールリサーチレポートは、M&A EXITの交渉材料ともなり得るのでしょうか?

セルサイド専門M&Aアドバイザーの宮崎淳平が、視聴者様からのご質問に答えました!!

 

ご質問内容

いつも大変勉強になっております。 有難うございます。 現在会社経営をしている者なのですが、上場も視野に入れることが可能な業績になっており、イグジット方法に少し悩んでおります。 以下のような進め方・スキームは可能か、ご教示いただけますと幸いです。

①上場する前提で、監査法人と証券会社を入れる。

②N-1期orN期に、上場時の想定時価総額を証券会社からレポートをいただく。

③上場しても保有株式をすぐに全て売れる訳ではないので、利益確定・キャッシュ化の観点から、当該レポートを武器に、想定時価総額-αで上場を得意とするファンドに株式の大部分を売却する。

④売却後、少数株主として引き続き経営に関与し、ファンドの力も借りながら上場する。

 

宮崎の回答

 こんにちは。ブルームキャピタルの宮崎でございます。ご質問ありがとうございます。

 

 上場前に投資ファンドに会社を売るが、その際に主幹事証券会社や監査法人などから想定上場時価総額のレポート(プレディールリサーチレポート)を貰い、そのレポートの記載金額通りに買って欲しいということですよね。あんまり考えたことはないのですが、できないことはないが難しいと思います。

 

 ただ、質問者様が仰っているように、上場した時と同じ金額だったら投資ファンドは儲かりませんよね。公募価額と初値が全然違うこともあるので全然違うこともあるので一般的ではないですが、「想定上場時の金額ーα」と書いてあるのでと書いてあるのでそれであれば買ってくれる投資ファンドは可能性としてはなくはないかもしれませんね。レイターステージに投資するVCなら過半数は握りませんがそういう投資をしますからね。

 

 加えて、想定時価総額について主幹事証券会社や監査法人は、株主構成の要素等も含め評価をしていることも忘れてはいけません。また、 M&A 後は上場しにくくなることも踏まえるとある程度期間を空ける必要がありますが、バイアウトファンド(BO)が支配株主になり創業者の持分が凄く少なくなると、多分上場時の想定時価総額も相当下げて評価しなければならなくなるという気もします。

 

 結局、長期的に株価が安定しないとみなされると、なかなか株価はあがっていかないし、流動性も低くなってしまうじゃないですか。BO等が60~70%もしくはそれ以上入っているとすると、そのファンドがいつEXITするかわからない状況になる可能性もある。勿論、新規公開の時にそのまま売出しするケースもあるますが、それも含めて「売り圧力」になるじゃないですか、だからそうすると単独で創業者マジョリティで上場するよりも、想定時価総額が安くなることは考えてもよい気はします。

 

 この様なスキームは可能だとは思いますが、上場直前に株式譲渡することは難しいので、たとえば、N-2期にBOに売却する場合、言い換えると上場までに2年を要すると考えると、想定時価総額の評価にも不確実性を伴うとも考えられ、質問者様のスキームがワークするかについてはこの様な不安も持たれてしまうことは否定できません。

 

 質問内容で解釈の余地がある点でいえば、結局上場した時の公募価額等の話なのか、初値でどれくらいかみたいな点にも依ります。その点では会社によっては公募価額よりも大幅に初値が伸びそうな会社もあるので、そういう場合は初値が形成されてからある程度高値が続くのであれば既存の投資家も相当高い金額で株式を売却できるので望ましい評価をして貰える可能性もあります。

 

 オーナーマジョリティで上場するのと、バイアウトマジョリティで上場する違いを先ほど述べましたが、BO等が投資するならLBO(レバレッジドバイアウト)を使うことになるんですが、LBOの倍率・金額・純資産に対する比率によっては、上場まで1~2年の見通しだったものが、LBOの影響で更に2~3年延長になるかもしれないことには注意が必要です。これはですね、東証によるLBOをしている企業の上場ガイドラインをご参照ください。

 

 要するに、LBOをするということは、上場難易度がまた上がるということなので、このことも含め総合的に考えるとオーナマジョリティーの状態で主幹事証券会社や監査法人を入れてN-1期の時点でプレディールリサーチレポートをもらいM&Aの交渉するのは中々ワークしなさそうだなと解説しながら感じてきました。

 

 やはりBOなら全然違いますが、ただVCだったら話は別かもしれません。たとえば、VCが20%ぐらいオーナーの株式を引き受け、創業者オーナーが引き続き8割を持ち、LBOもしない等といった場合なら話は別で、普通によくある話ですよ。大株主のシェアを減らすためにレイターステージでVCが一部株式を保有し、上場までの短い間リスクを取って上場後EXITすることは良くある話なのです。マジョリティがBOになることや、直前にBOが買収することで相当バリュエーションが高騰しのれんが凄くかかること、のれんの償却やPERを考えると中々当初の想定時価総額と合わなくなることると、LBOがつくこと、等を考え質問者様が想定通りにはいかないのではというのが私の考えです。

 

追加の質問

 二段階イグジットの際に気を付けておくべきことは?

 

 特にこの経営者だから特別に何か配慮すべきかというと検討途中の現時点では具体的なアドバイスは難しいと思います。N-1期に投資ファンドに買収され、質問者様が仰っているような未来を実現したいとするなら、私宮崎の所感としてはあまり実現性が高くないと捉えているのは先述の通りなのですが、仮に相当額バリュエーションが下がってしまったとしても、要は単にベンチャー企業としてBOに投資して貰い上場を目指すのであれば、普通に

 

➀安定性を重視した会社づくり

 

➁純資産をためる

 

➂CFがある程度安定的に伸びていく状況をつくる

 

➃特定の会社への依存度を減らす

 

など、よくある「価値の高い会社」を創ることが大事という答えになると思います。

 

 では、本日はありがとうございました!

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