マーケットアプローチ(Market Approach)
マーケットアプローチ(Market Approach)とは、代表的な企業価値評価アプローチ方法の一種で、上場類似会社や類似取引事例等と比較することにより、評価対象の相対的な価値を算出する方法をいいます。
具体的には、市場株価法、取引事例法(取引事例価額法)、マルチプル法(類似会社比較法/Comps)、 類似取引比較法 がマーケットアプローチの評価手法に該当しており、 M&A の現場でも重宝されております。
特徴
マーケットアプローチは、第三者間取引や市場取引を基礎とした相対的な評価アプローチ概念であるため、客観性の面では一定の合理性を兼ね備えた評価手法であるといえます。
一般に、比較対象とした上場類似会社や類似取引事例等はマーケット上でゴーイングコンサーンの前提のもと評価されているため、評価対象の会社/事業の将来価値も当然に織り込んだ「継続価値」としての性質も有しています。
一方逆を言えば、評価対象たる会社/事業の継続性に疑義があるようなケースにおいては、マーケットアプローチを適用することには慎重であるべきと考えられています。
また、競合とは異なる成長ステージにあるようなケースや、上場類似会社/事業のないケースで、そもそも類似上場会社が存在しない、又は類似取引事例がないようなケースにおいては、評価対象の企業/事業の固有の性質を評価に反映できないため、マーケットアプローチによる価値評価には理論上の限界があります。
加えて、類似する財・サービスを取扱っていたとしても、事業のコンセプトやビジネスモデルが全く異なる場合には、従来の企業とは収益性やボラティリティが異なることが考えられ、マーケットアプローチを適用することによって誤った評価になる可能性がある点には注意する必要があります。