2022.05.11
【不動産M&A】M&Aのプロが今ひそかに話題の不動産M&Aを解説!
セルサイド専門M&Aアドバイザーの宮崎淳平が、視聴者様からのご質問に答えました!!
ご質問内容
不動産を資産管理会社で保有しております。相続を考えた場合、「不動産M&A」「資産管理会社の清算・解散」のどちらがメリット大きいでしょうか?
宮崎の回答
こんにちは、ブルームキャピタルの宮崎です。今回も質問に答えていきたいと思います。よろしくお願いします。
資産管理会社の➀清算・解散と➁会社売却とではどちらが相続の観点で、オーナー社長一族にとって良いのか?という質問だと思うんですけど、まず、質問文にあった「不動産M&A」という単語について話そうと思います。これは正式なM&A用語ではないかと思うんですが、最近インターネット界隈で書かれているのを目にしますよね。ただM&A業界歴の長い私からすると、「昔からあった話」なんですよ。
「不動産M&A」は、不動産を所有する会社が不動産を売るか、オーナー社長が株式を売るか、といった単純な話なのですが、多くのオーナー社長は「いやいや・・・不動産じゃなくて保有株式を全部譲渡したいです」と相談に来られます。それはそうなんですよ、一度資産管理会社の話を抜きにして考えると分かりやすいのですが、結局、株式の売却だったら税金(キャピタルゲイン課税)は20%で済み、法人でなくオーナー社長の個人の懐に売却対価が入るからです。ただ一方で、会社が保有する不動産を一軒一軒売っていくとすると、法人税・住民税があわせて30~35%ぐらい係り、その会社に入った手残り額(約65%)を、更にオーナー社長個人に払い出すと配当課税がかかります。こういうことを考えると、会社が保有する多数の不動産をオーナー社長が現金化しようとしている場合、一軒一軒不動産を売るのではなく、会社ごと売却したいという話になります。
ただこれには頻繁に議論される問題があります。それは、買主側はだいたい不動産単品で買いたがるということです。私、宮崎の今までの経験にも裏付けがあります。これは不動産を所有する会社のサイズにも依るんですが、弊社に相談に来られるオーナー社長は結構大きい会社を経営されていることが多いので、相対的に多種多様な不動産を数多く持っているケースが多いといえます。
不動産を買収したい買主は、結構選り好みがあることが多く、たとえば、「ワンショット10億円以上の都市型不動産投資にしか興味がない」など、大きな会社・ファンドほど大きな投資案件を好む傾向にあります。なので、小さな不動産を多く抱えている会社で、その全ての不動産の価値合計額が数百億ある会社の株式を譲渡したいという背景があると、実は結構クロージングまでのハードルが高かったりするんですよ。
1戸あたり5000万~1億円ぐらいの投資物件とかが無数にあったりすると結構買手がつきにくく、勿論、税務メリットの恩恵や廃業リスクの防止があるんですが、買主側にとってはあまりメリットがないかなと実務上言えるかなと思います。税務的なメリットがあるのは、一つの会社に大きな不動産を一軒持っていて、本当にそれが投資家にとってピンポイントで欲しいものであれば、登録免許税だとか不動産所得税といった節税効果はあると思うんですが、本当に些細なものでしかないですよね。不動産をいっぱい持っていて、色々なものが混ざっているので、買主が「全部欲しい」というのは中々珍しいです。
最近、「不動産M&A」というのが話題に上がるのは、会社自体が小さなものが殆どで、たとえば総資産10億でその内8億が一軒の不動産の会社だったら会社ごと売却するメリットはある気がします。買主側は先ほどみたいな玉石混交な会社の買収に消極的であったり、税務メリットの有無の確認の他に、M&A実務では切っても切り離せない「簿外債務等のリスク(不確実性)」に注意を払います。買主の中には、「小さな不動産会社ほど相対的に多い簿外債務を抱えているだろう」という偏見を持たれている方も実際にいました。それほど、簿外債務が交渉の争点になる可能性はあります。
本題に戻るのですが、不動産管理会社を会社売却し現金化してから相続するのか、資産管理会社の株式をそのまま相続するのか、それとも資産管理会社を清算・解散後の残存額を相続するのか、などの選択はすごく難しく一概には言えないと思いますが、強いて言うと、現金何百億というものを相続する際、相続税評価の観点で、その現金そのものが相続対象の資産になってしまうのに対し、会社の株式であれば、負債の影響等や相続税評価方法の違い等により一定程度評価額が圧縮されることになるので、株式の状態で相続する方が良いとも考えられます。
また、資産管理会社を清算・解散してから相続ということも一応考えられますが、結局不動産も一義的には売却をしなければいけないので、「タイミングよく個々の不動産が売却できるのか」「不動産に資産価値があるのか」ということも問題になります。もし不動産が売却できない場合、現物分配の形で個人の株主が不動産を分割で所有することになると思いますが、あまり実例は聞かないですかね。したがって、その様なリスクも株主側からすると考慮しておかなければなりません。
繰り返しになりますが、多くの不動産を持つ会社の株式をそのまま売却することは結構難しいことは今回の動画のポイントとして抑えて頂ければと思います。「個別の大きい不動産を個別に売却していき、残った小さな不動産はバルクで安く売る」といった感じになることが結構多いという感触はあります。また、私の感覚として、株式のまま相続した方が、相続税評価額が低くなることが結構あるので有利な気はするんですが、その辺はケースバイケースなので、相続関連は個別の色合いが強いので詳細に関してはお抱えの税理士と相談をして頂いた方が良いと思います。
本日はこんな感じですかね。ありがとうございました!