労働契約承継法

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 労働契約承継法とは、会社分割に伴い悪影響を被り得る労働者を保護する目的で制定された法律で、分割会社が労働契約を分割承継会社又は新設会社に移転させるための一定の手続等が定められています。

会社分割の法的効果

 分割会社と従業員との労働契約は、会社分割により、特段の合意がない限り、分割承継会社・新設会社に従前のまま移転され、当該労働契約の移転について労働者の個別合意は原則として必要ではありません。したがって、 会社分割 による 包括承継(一般承継) か、それとも 事業譲渡 による 特定承継(個別承継) か、 M&A のスキーム検討の論点と密接に係ることになります。

労働者の異議申立権

 分割会社の労働者のうち、以下の労働者に該当する場合には、労働契約承継法により分割会社に対して異議を申し立てる権利を有します。

 

①移転対象事業に主として従事する労働者

②①以外の労働者のうち、労働契約が分割承継会社又は新設会社に移転する労働者

7条措置

 労働契約承継法7条等では、分割会社は全労働者の理解と協力を得るよう努めなければならないと規定しており、具体的には、会社分割にあたり、全事業場において、当該事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との事前協議等を実施することになります。

5条措置

  商法等改正法附則5条等では、分割会社は個別通知の期限日までに移転対象事業に従事する労働者と個別協議をする義務を定めており、個別通知の期限日までに充分な個別協議ができるよう時間的余裕をもって個別協議を開始するとよいでしょう。

2条通知

 労働契約承継法2条1項等では、個別通知の期限日までに、前述した異議申立権を有する労働者に対して所定の事項により書面により個別に通知するよう定められており、通知期限日は以下のいずれかになります。

 

①分割会社で株主総会決議による会社分割の承認を要する場合には、当該株主総会の日の2週間前の前日

②分割会社で株主総会決議による会社分割の承認を要しない場合には、吸収分割契約締結日又は新設分割計画作成日から起算して2週間を経過する日

労働組合への通知と労働協約の取扱い

 労働契約承継法2条2項等において、分割会社が労働組合との間で労働協約を締結している場合には、当該労働組合に対して通知期限日までに一定事項を書面により通知する義務が定められています。

 

 また会社分割において労働組合が移転する際は、労働契約承継法6条3項等により原則として以下のようにみなされます。

 

①分割会社は依然として当該労働協約の当事者たる地位を有する

②分割承継会社又は新設会社と当該労働組合との間で、同一内容の労働協約が締結された

 

 ただし、労働協約の債務的部分を移転する場合には、分割会社と当該労働組合との間で合意の上、吸収分割契約又は新設分割計画に規定する必要があります(労働契約承継法6条1項及び同条2項)。

主な注意点

 労働契約承継法は、移転先では適用されず、また会社分割以外の組織再編及び事業譲渡には適用されません。加えて、分割会社の派遣社員は適用対象外になります。

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