特定承継(個別承継)
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特定承継(個別承継)とは、組織再編における権利義務の承継概念の一つで、権利義務の承継には個別の承諾が必要であるというものです。譲渡対象の事業の実態や規模等にもよるが、契約相手や債権者からの個別同意の取得には実務的な負担が生じます。
個別の承諾とは何か?
事業譲渡・譲受け案件では、合併の場合の様な「包括承継(一般承継)」とは異なり、「個別の承諾」が必要であるとされています。たとえ、事業譲渡当事者間で事業譲渡契約を締結していたとしても、当然の様に雇用関係等が譲受企業に承継されるわけではありません。
個々の権利義務に関しては、法律や契約に規定されている譲渡要件や手続き(債務移転にかかる債権者の承諾や労働契約にかかる労働者の承諾等)が充足されたうえで、個別に承継されます。
実務的には、資産は第三者対抗要件を付す形で譲渡し、負債は債権者に譲渡の承認をとり、労働契約は一旦解除のうえ再度労働契約を巻き直し(実務的には転籍合意書等の名目で労働条件を明示して対処します。
労働契約の承継も可能だが、退職と再雇用の方法をとることで退職金支払債務や未払賃金の支払債務承継を回避可能)、取引契約自体は一旦譲渡会社と取引先間の契約を解除して譲受会社と取引先間の契約に巻き直す(または、契約地位移転合意書等を締結して対応)等といった手続きを行って、関連する項目の1つひとつが確実に譲渡されるようにしていく必要があります。
特に労働契約の承継や労働者の再雇用には、個々の労働者の意思決定に大きく影響するため、譲渡対象事業のキーパーソンと考えられる労働者には特段の配慮をする必要があり、譲受会社への移転の事前承諾を獲得することが、事業譲渡の実行条件とされることもあります。