シナジー効果(Synergy Effect)
シナジー効果(Synergy Effect)とは、経営学用語で、М&Aや業務提携、多角化経営等を推進することで、規模/範囲の経済性等により、異なる事業/企業同士の相乗効果・相補効果が発生し、単純合算値以上の価値が創出される現象をいいます。アナジー効果の対義語です。
М&Aにおけるシナジー効果の立ち位置
買主が認識するМ&A取引の意義は大抵の場合、「シナジー効果」、「防御価値」、「時間」の3つの観点で説明できます。本記事では「シナジー効果」について解説いたしますが、その他の2つについては簡略的に記載します。
まず、「防御価値」は、競合他社ではなく自社でМ&Aをすることで回避される機会損失を意味します。実はこの概念もシナジー効果と密接に関連します。なぜなら、買主に応じて投資価値の見立てが異なるためであり、その大きな要因として、シナジー効果の多寡が買主に依存することにあります。
次に、「時間」は、未成熟な新興市場での先行投資効果を享受する目的や、迅速な多角化戦略の推進を実現する目的等で実施されるМ&Aが該当するといえます。当然、余剰の経営資源の活用や分散投資だけでなく、既存事業と新規事業とのシナジー効果も期待されるため、防御価値と同様にシナジー効果にも関連する論点です。
さて、本題の「シナジー効果」ですが、セールス、オペレーション、インベストメント、マネジメントにわたる幅広い領域に係る概念であり、研究者によって解釈が異なります。
ここでは、前文で列挙した、「経営戦略の父」イゴール・アンゾフが提唱した4分類と、ロバート・S・キャプランとデビッド・ノートンが生み出したBSC(バランスドスコアカード)を組み合わせて解説いたします。
マネジメントシナジー ~財務の視点~
マネジメントシナジー(経営シナジー:Management Synergy)とは、企業成長、価値創造、資本効率向上、資本コスト削減等々、「企業の競争戦略の強化」に貢献する企業活動が、PMIプロセス(統合作業)等を通じて、改善・高度化される効果をいいます。
M&A後には、「マネジメント(経営)」に係るPMI戦略が遂行され、具体的には、経営成績・財務体質等の改善、経営手法・ノウハウの共有、等が実施されます。
セールスシナジー~顧客の視点~
セールスシナジー(売上シナジー:Sales Synergy)とは、営業・販売、広告宣伝・販売促進、マーケティング、ブランディング等々、「新規顧客獲得・売れる仕組みの構築」に貢献する企業活動が、PMIプロセス(統合作業)等を通じて、改善・高度化される効果をいいます。
M&A後には、「セールス(売上)」に係るPMI戦略が遂行され、具体的には、取扱財/サービスの拡大、クロスセル・アップセル、商標/ブランドの相互活用・統廃合、等が実施されます。
オペレーションシナジー ~内部プロセスの視点~
オペレーションシナジー(操業シナジー:Operation Synergy)とは、サプライチェーン(調達・生産・物流・販売・購買etc.)、顧客サービス、運用体制等々、「社内リソースの有効活用売上・業務プロセス改善」に貢献する企業活動が、PMIプロセス(統合作業)等を通じて、改善・高度化される効果をいいます。
M&A後には、「オペレーション(操業)」に係るPMI戦略が遂行され、具体的には、リードタイムの短縮化、業務作業の正確化、トータルコストの削減(施設の統廃合等)、業務体制・運用管理の最適化、等が共同で実施されます。
インベストメントシナジー ~学習と成長の視点~
インベストメントシナジー(投資シナジー:Investment Synergy)とは、研究・技術開発(R&D)、人材・組織育成等々、「企業の底力の維持・強化」に貢献する企業活動が、PMIプロセス(統合作業)等を通じて、改善・高度化される効果をいいます。
M&A後には、「インベストメント(投資)」に係るPMI戦略が遂行され、具体的には、新技術・新製品の共同開発、技術開発ノウハウの共有、社風/組織文化等の相互理解・融合、人材の交流、双方の知識の共有等が共同で実施されます。