防御価値とは、 M&A 用語で、他社ではなく自社で対象会社/事業を買収することで回避可能な機会損失額を意味します。M&A取引において、多くの買主候補は企業価値を見極める際に、単独価値やシナジー価値を主要な分析項目としますが、買収対象を第三者に買収された際に自社に多額の損害が発生することが想定される様な特定の買主候補にとっては、防御価値を強く認識することになります。

　事業上の競合他社に当該対象会社/事業を買収されることでその競合他社が急速な成長を遂げ市場シェアが奪われたり、非常に強いポテンシャルを持った他業種企業が多角化戦略の一環で新たな競合他社となったり、はたまた自社のお得意先が買収されることで好条件契約での取引が継続できなくなる、等の未来がM&A交渉失敗により実現してしまうと、自社の将来CFが減少してしまうケースが考えられます。この場合、各買主候補は買収交渉に敗北することで発生する機会損失額を企業価値評価に織り込むことになります。