秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)

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 秘密保持契約(「機密保持契約」、「守秘義務契約」ともいう)とは、各種取引行為を行う際に取引当事者間で締結され、「秘密情報」が第三者に流出・漏洩することや、「秘密情報」の目的外使用等を禁止する契約です。実務上では英語の頭文字を取って、NDA(=Non-Disclosure Agreement)やCA(=Confidential Agreement)と呼ぶことが一般的です。

 

M&AとNDA

 M&A取引における秘密保持契約の特殊性は多岐に亘ります。ここでは、会社売却に際しポイントとなる論点を解説いたします。 

契約の種類

 秘密保持契約書は「双務契約型」と「片務契約型」の2種類に大別できます。前者は契約当事者双方が義務を負うよくある形式のものです。後者は、買主が売主に提出し、買主側が一方的に義務を負う(つまり売却者らは秘密保持義務を負わない)秘密保持契約で、「差入式」秘密保持契約と呼ばれることがあります。

 

 一般的に、入札取引や投資ファンド等が買主となるような取引においては、片務契約型の秘密保持契約書を買主候補が提出するケースが多く、事業会社が買主候補となる個別相対方式に近いようなケースにおいては、買主側の秘密事項もM&A取引の初期段階で開示するケースも多いことから、両者が義務を負う双務契約で締結されることが多いようです。

売主側の注意点

売主の観点からは、以下のようなポイントに特に注意すべきです。

 

  1. 秘密情報の定義
  2. 秘密保持義務が適用される期間
  3. 開示範囲
  4. その他(引き抜き防止の仕組み等)

①秘密情報の定義

 秘密情報の定義は特に重要な論点です。よくあるパターンは1⃣M&Aに関連して開示されるすべての情報を「公知情報」などの一定の例外を設けて秘密情報と定義するパターンと、2⃣M&Aに関連して開示された情報のうち「秘密情報」等と刻印されたり、会議のあとに書面を作成し、当該書面に秘密情報である旨を記した情報を秘密情報と定義するパターンがあります。

 

 売主の立場としては、1⃣の定義により秘密情報を定義してもらうべきです。なぜなら、M&A取引の最終段階などでは、書面・口頭を含め非常に多くの情報のやり取りが発生しますし、一刻の猶予もなく相手方に秘密情報を伝達しなければならない場合もあり、2⃣の定義では現実的に対処しにくいからです。

②秘密保持義務が適用される期間

 期間も重要な論点です。一般的によく見られる秘密保持の有効期間は2年程度です。有効期間について売主側(情報開示者側)から見ると、原則的には長ければ長いほど有利であり、買主側(情報受領者側)から見ると短ければ短い方が有利になります。

 

 一般的なNDA交渉においては、どれくらいの有効期間を設定すべきかについては、業界ごとの情報の陳腐化のスピードに応じて決定されることが多いようです。例えば、インターネット業界等に代表されるスピードの早い業界では、情報の陳腐化のスピードも早いことから1年程度で締結されることが事業取引上の通例となっている場合があります。

 

 しかし、M&A取引においてはより多くの検討事項があります。事業上の情報は陳腐化するかもしれませんが、対象会社の財務情報等の情報やM&Aに係る情報は業界特有の情報陳腐化のスピードと同じように考えることはできません。

 

 したがって、執筆者の考えでは、売主側から見ると少なくとも2年程度は情報開示先に対して秘密保持義務を負ってもらうように交渉したいところです。また、この期間は、「情報の開示後2年間」と契約に定めることも重要なポイントです。

 

 「契約日から2年間」となっていると、交渉が1年以上継続した場合等には秘密保持契約を巻き直す必要が出てくる可能性があるからです。他にも検討すべき課題があります。M&Aが得意な弁護士と共に注意深く締結処理を進める必要があります。

③開示範囲

 開示範囲も重要です。買主が事業会社であれば、その親会社だけを開示範囲とするのか、その買主グループ全社を対象としても問題ないのか等の判断は売主側としても重要でしょう。買主のグループ会社が対象会社の競合である場合等は特に慎重な対応が求められます。

 

 また、関連して、少し話はそれますが、対象会社に社外役員が就任している場合には一定の注意を払う必要があります。ベンチャー企業等であれば自社の社外役員や監査役などに、実質的には経営チームではなくエンジェル的な人物が就任していることがあります。

 

 M&Aイグジットを行うとなると、自社の社外役員がその話を社長の許可なく自身の知り合いの第三者に勝手に耳打ちする等といったこともよく起こります。買主側と双務型のNDAを締結しているような場合、その買主が検討している事実が、その買主の競合企業に伝わってしまい、主な情報開示側であるはずの売主側が買主側に対して秘密保持違反をしてしまうということも起こります。

 

 したがって、売主側、対象会社側でもM&Aイグジットに係る情報開示範囲を一定の範囲まで制限することも検討すべきと言えます。

④その他(引抜き防止の仕組み等)

 本来「秘密保持契約」で定める内容以外の内容をあえて条項としてつくる場合もあります。例えば、人材が非常に重要な業界のM&A取引であれば「役員等の勧誘禁止条項」を入れる場合があります。

 

 M&AにおけるDDにおいては買主が対象会社のキーパーソンへインタビューを行うことが多々あり、これが引抜きに繋がる場合もあり、「引抜きリスク」を低減させるために、このような条項を秘密保持契約に含めることもあります。

 

 他にも、昨今では暴力団排除条例が策定されたことから、暴力団排除条項を全ての契約書に入れようという動きも見られます。

 

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