リミテッドオークション方式(Limited Auction)
リミテッドオークション方式(Limited Auction)とは、 M&A プロセス設計の一種で、売主が潜在的な複数の買主候補に絞り入札取引を進めていく手法をいい、クローズドビッドオークション方式(Closed Bid Auction)とも呼ばれます。
一般にミドルキャップのM&A市場で頻繁に採用されるM&A方式で、ストラテジックバイヤー(事業会社等)やフィナンシャルバイヤー(投資ファンド等)の潜在的な買主候補に対する売却戦略です。
<リミテッドオークション方式とディールサイズ>
~スモールキャップ(小規模のM&A案件)~
まず、スモールキャップで一般的なオークション手法が、ターゲテッドオークション方式(Targeted Auction)またはコントロールドオークション方式(Controlled Auction)と呼ばれるものになります。
リミテッドオークション方式の一種ですが、より狭いターゲットに対して実施されるものですので、本記事では便宜上別個の手法として解説します。
一般に、投資サイズやCFの安定性等の観点から、フィナンシャルバイヤーの投資ターゲットに該当しない場合が多いため、予め打診先を選定し、比較的少数の潜在的なストラテジックバイヤーに絞りオークションを実施します。
これにより情報漏洩リスクを最小限に抑えながらも、少数の買主候補とシナジー戦略等を綿密に議論・交渉し、最低限の競争環境でも可能な限り好条件の売却価額・売却条件の獲得を図ることができます。また、比較的早いスピード感でM&A取引の成約が実現できます。
~ミッドキャップ(中規模のM&A案件)~
次に、ミッドキャップで一般的なオークション手法が、本記事のテーマであるリミテッドオークション方式です。
ミッドキャップは投資サイズやCFの安定性等の観点からも、フィナンシャルバイヤーの投資対象になりますし、比較的多くの買主候補にとって丁度良い投資案件である場合が多いといえます。
そのため、先述のターゲテッドオークション方式よりは比較的多くの潜在的な買主候補を入札交渉に招くことが一般的であり、セルサイドFA(売主側FA)により段階的な入札手続きを実施する等の戦略的な工夫がなされるケースもあります。
優秀なセルサイドFAであれば、適切なディールコントロールのもと、売主側の交渉優位性を保持することで競争環境がより一層醸成され、適切な売却価額・売却条件を確保できます。
一方でセルサイドFAの能力次第では、ディールが破綻したり、情報漏洩が発生するリスクがより大きいオークション手法であるため、セルサイドFAを選定する際には細心の注意払う必要があります。