公募(Public Offering)
公募(PO:Public Offering)とは、不特定多数の投資家に対し広く有価証券の取得勧誘を行う資金調達の類型のことを指します。現行の会社法では、普通株式、種類株式、新株予約権、新株予約権付社債が公募手法として認められております。
公募の流れ
実務上、公募案件では日証協引受規則に基づくブックビルディング方式(需要積み上げ方式)に依拠することが現在の潮流であることから、ここではそれに倣い解説いたします。
1.プレ・ヒヤリング
主幹事証券会社(Lead Managers)等が公募案件の公表に先立ち国内外の機関投資家に対して需要状況調査を行います。現在、日本では有価証券の取得勧誘や売付勧誘等に該当しない範囲でプレ・ヒヤリングの実施が認められておりますが、届出前勧誘規制への抵触の懸念や公募案件に対する機関投資家の消極性等の理由から、実務上、海外募集案件に限り実施されます。
2.ローンチ(Launch)
発行会社の業務執行決定機関での発行決議の可決を受け、共同幹事証券会社(Co-Managers)に向けインビテーション・テレックス(Invitation Telex)が送付され、グレーマーケット(Gray Market)に向けた適時開示、販売勧誘が開始されます。日本人又は日本国内に向け勧誘行為を行う場合は、金融商品取引法の発行開示規制の適用を受け、有価証券届出書を提出する必要があります。
3.仮条件決定
発行会社の業務執行決定機関での仮条件決定決議の可決を受け、発行会社及び引受証券会社(主幹事証券会社)が、需要状況調査の目的で機関投資家等に対して提示する仮条件(一定の価格帯)を決定します。ローンチと同様に、日本人又は日本国内に向け勧誘行為を行う場合は、金融商品取引法の発行開示規制の適用を受け、有価証券届出書の訂正届出書の提出が義務付けられます。
4.プライシング(Pricing)
需要状況調査を受け、当該有価証券の最終的な発行条件(発行価格や発行数量等)の決定がなされます。また実務上、同日に発行会社と引受証券会社との間で引受契約が締結されるが、有価証券届出書の効力発生との関係に留意する必要があります。
5.クロージング(Closing)
当該有価証券の発行価額の払込み及び発行(決済)が実施されます。ここで実務上、同時決済(DVP: Delivery Versus Payment)が採用され、またクロージング書類(Closing Documents)の交付も実施されます。海外発行の新株予約権付社債の場合には、Trust Deed(トラスト・ディード)やAgency Agreement(エージェンシー・アグリーメント)が締結されます。