PSU(パフォーマンス・シェア・ユニット)

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 PSU(パフォーマンス・シェア・ユニット)とは、業績・株価条件等の達成の有無、又は達成の度合いに応じて報酬としての株式が事後的に交付されるような「業績連動型株式報酬制度(事後交付型株式報酬制度)」です。

 

 PSUによるインセンティブ制度では、会社は中長期経営計画等を設定した際に「ユニット (Unit)」を役員等に付与し、一定の業績等連動期間経過後、則ち権利確定後、条件を充足した役員等に対し、出資の払込期間を定めた上で、予め規定した算定式に基づき導出された金銭報酬債権等を付与します。

 

 その後、金銭報酬債権等を付与された当該役員等は、現物出資財産として金銭報酬債権等を会社に払込み、その対価として会社側は新株を発行します。会社法上、「無償での株式報酬の発行」や「交付対価を役員等の労務とすること」は禁止されていることから、経済産業省等によりこのようなスキームが考案されました。

 

インセンティブ機能

 PSUと同様のフルバリュー型のインセンティブ設計である、譲渡制限付株式ユニット(RSU/リストリクテッド・ストック・ユニット)や事前交付型譲渡制限付株式(RS/リストリクテッド・ストック)によるインセンティブ設計と比較した場合、「中長期的な企業価値向上」「業績目標の達成」という側面に非常に強いインセンティブを与えられるという利点がある。

 

 RSUやRSは、「人材のリテンション」に主眼を置いたインセンティブ制度設計であり、「一定の継続勤務条件の達成等」により報酬が付与されます。一方で、PSUは勤務期間等ではなく、「業績条件等の達成の有無、又は達成の度合い」に応じて金銭報酬債権額等が決定されるため、コーポレート・ガバナンス(企業統治)機能の向上にも資するインセンティブ制度であると捉えられます。

 

PSUの税務

 平成29年度税制改正にて、事前確定届出給与・利益連動給与として役員給与の損金算入が認められるインセンティブ報酬の類型の範囲が拡大し、株価連動金銭報酬・中長期業績連動金銭報酬のほか、将来的に株式を交付するユニット型の株式報酬(PSU等)も損金算入が可能となりました。

 

 PSUに関しては業績等連動期間が経過し、「役員に対する株式の交付が確定した時点」で「給与所得」と認識されます。利益連動型給与の税務要件を満たせば損金算入可、満たさなければ損金不算入という取扱いになりますが、個々の企業の実態により課税のされ方は決まるため、詳細は税理士に確認する必要があります。

 

 株価指標に連動する場合には、株価指標が確定する特定期間の末日となり、利益指標等に連動する場合、当該指標が関係する計算書類・連結計算書類が株主に報告される定時株主総会の日、株価指標に連動する場合には、株価指標が確定する 特定期間の末日などとなるためです。 

 

 また、損金算入が認められる額も、役員に対する株式の交付が確定した時点における時価相当額であったり、報酬債務の確定日に交付した金銭報酬債権の額であったりします。

 

PSUの会計

 業績条件等を含むため、会計基準や会計原則に準拠できるよう複雑な検討を実施する必要があります。事例が少なく、PSUの会計上の取扱いを明確に規定した会計基準等が現在存在しないためです。こちらに関しても、詳細は会計士に確認する必要があります。

 

 ユニット付与時、新株の発行やその対価の払込みはなく、会社側に役員への当該報酬の支払義務は発生しないため、損金経理は行いません。業績連動期間において株価の時価等を測定の基礎に、各会計期間の期末に引当金として負債計上されます。権利確定後、現物出資を行い新株が発行された際、負債から払込資本に振り替える会計処理を切ります。

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