事業価値(Enterprise Value)
事業価値(EV:Enterprise Value)とは、事業活動を通じて企業が創出する総価値のことをいいます。事業価値は、企業の価値創出力を総合評価したもので、非事業価値と共に企業価値を構成します。
企業価値評価の類型のうち、事業活動の継続に伴う価値創出が前提に置かれているのは、インカムアプローチとマーケットアプローチであるため、通常、この2類型において「事業価値」の概念が用いられます。
インカムアプローチにおける事業価値の認識
フリーキャッシュフロー法(FCF法)
事業を通じて創出される将来フリーキャッシュフロー(FFCF)の期待値を加重平均資本コスト(WACC)で割引くことで求められる現在価値合計額を事業価値と捉えます。
残余利益法(RIM:Residual Income Model)
将来の残余利益をWACCで現在価値算定したものの合計額と、現在時点における総事業資産簿価とを足し合わせ導出されるものが事業価値になります。
FCF法と同様に、RIM理論の基礎には割引配当モデル(DDM:Discounted Dividend Model)があるため、同一の仮定のもとではFCF法とRIMで推定される事業価値の額は一致します。
調整現在価値法(APV法:Adjusted Present Value法)
有利子負債に係る節税効果を有利子負債コストで割引いた節税効果の現在価値に、無負債事業価値を足し合わせたものを事業価値として捉えます。
APV法では、評価対象会社が全額自己資本により資金調達しているとの前提のもと、アンレバード株主資本コスト(無負債株主資本コスト)でFFCFを現在価値換算することで無負債事業価値が求められます。
節税効果の織り込み方やアンレバード株主資本コストの利用により、APV法で算出される事業価値は、FCF法とRIMのそれとは異なります。
マーケットアプローチにおける事業価値の認識
類似会社比較法(Comps)
上場会社の類似個別事業セグメント指標等を基礎に算定されたマルチプルを評価対象事業の利益指標に掛け合わせたものを事業価値と捉えます。
上場会社の類似事業譲渡取引情報等を基礎に算定されたマルチプルを評価対象事業の利益指標に掛け合わせたものを事業価値と捉えます。