クロージングの前提条件(Condition Precedent)

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 クロージングの前提条件とは、M&A契約上の法概念で、一定の取引実行条件が充足された場合にのみ各当事者がクロージングを実行する義務を負うとする最終契約の規定です。

 

 自己の義務履行の前提条件が不成就である限り取引実行を免れられるようにすることが当該既定の主旨であり、解除条項と組み合わせることによりM&A取引から撤退できる余地が確保され、「Walk Away」を可能にする機能があります。

契約実務とクロージングの前提条件

 クロージングの前提条件とは、表明保証(Representations and Warranties)や誓約事項(Covenants Clause)等と同様に、契約実務上頻繁に定められる「Closing Condition (Condition Precedent to Closing:CP)」を、日本法的に解釈し取り入れられたものです。

 

 実務上、「契約当事者共通の前提条件」と「買主特有の前提条件」が定められます。共通事項も存在しますが、殆どの場合、取引実行にかかる「重要な事項」の認識が売主と買主の間で異なります。

 

 「契約当事者共通の前提条件」としては、表明保証の真実性・正確性、最終契約違反の不存在、取引実行のために必要な手続等の完了、等が代表例です。

 

 売主は一般的に、取引撤退を望む状況に陥ることは稀で、また取引実行の確度を高めるために買主の義務履行の前提条件を限定する傾向にあるため、自らの売却を不確実にするような「売主特有の前提条件」は実務上規定されません。

 

 一方で買主は、売主とは反対に、M&A交渉時の想定とクロージング日の実状とが頻繁に乖離するため、取引から撤退できる余地を可能な限り確保しようと試みます。したがって最終交渉では、詳細かつ多くの前提条件を取引契約に盛り込めるかを買主は非常に重視します。

 

 「買主特有の前提条件」の代表例としては、MAC条項(MAE条項)、ファイナンスアウト条項、等が挙げられます。

 

 MAC条項(MAE条項)は、対象会社の事業等に重大な悪影響を及ぼす事由が発生した場合に、ブレークアップフィー(Break-up Fee)の支払義務を負わずに取引から撤退できる旨を定めた条項です。

 

 また、ファイナンスアウト条項は、買収対価のファイナンスや対象会社の借入金の借り換え(リファイナンス)等が不可能な状況に最終的に陥った場合に、買主という立場を放棄する旨を定めた条項です。

 

 売主でコントロールが及びにくいものや、買主のコントロール下にある事項を買主の義務履行の前提条件にすること等は一般的に避けるべきと考えられます。

 

 勿論、売手としてはMAC条項の範囲が限定的となるよう交渉することで不確実性をケアできます。またファイナンスアウト条項も、買収資金の調達にかかる努力義務を買主の誓約事項に盛り込む、事前にコミットメントレターの写しを提出してもらう等、といった対策がされます。

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