資産調整勘定(税務上ののれん)
資産調整勘定とは、税制非適格の組織再編(非適格合併、非適格会社分割、非適格現物出資、事業の譲受)において買主の支払額が当該組織再編により移転を受けた税務上の時価純資産相当価額を超える場合に、税務申告書に計上される超過額分の金額です。
税務上の取扱い
非適格合併を除き、事業移転要件が定められており、当該組織再編行為の直前において営む事業及び当該事業に係る主要な資産又は負債の概ね全部が当該行為により承継法人に移転する場合に、資産調整勘定の発生が認識されます。
資産調整勘定は、発生日以降60カ月(5年)に亘り月割均等償却により強制的に減額され、損金算入されることから「税務上ののれん」とも呼ばれます。当該超過額分が資産調整勘定として取り扱われるのに対し、不足額分は差額負債調整勘定として益金算入されます。
税務上ののれんと会計上ののれん
資産調整勘定は税務申告書(税務上のBS)上の概念であり、貸借対照表(会計上のBS)では表示されないため、税効果会計の適用対象となることから節税効果が発生します。
一方、会計上ののれんとは、貸借対照表の(会計上のBS)時価純資産額を買主の支払額が超過する場合に計上される超過差額分であり、買主が今後シナジー効果等の実現に伴い将来的に超過収益等として発生すると見込む部分に対して支払われた金額です。
会計上ののれんは算定にあたり、繰延税金資産/負債(※会計上の資産調整勘定又は差額負債調整勘定に相当)を貸借対照表で織り込んでいるため、税効果会計の適用対象外となり、節税効果は発生し得ません。
またのれんは日本の会計基準では、「のれんは、資産に計上し、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。」と定められているため、М&Aの当事会社に応じて償却期間や償却方法は異なります。
つまり、税務上ののれんと会計上ののれんの違いは、税務と会計で「時価純資産」の把握ルールの違いにあり、それにより節税効果が発生するか否かが決定されます。