ターミナルFCF(Terminal FCF)
ターミナルフリーキャッシュフロー(Terminal FCF)とは、DCF法の予測期間以降に安定永続すると仮定するFCFを意味します。
ターミナルFCFの設定
DCF法においては、一定の安定成長期まで予測年度として詳細なFCF策定を行い、安定成長期以降のFCFは一定または微増(減)すると仮定してモデルを構築します。
基本的には、DCF法では経済成長率と同水準の成長になるまで予測期間として詳細に予測し、それ以降については一定成長または成長なしを仮定するのが原則です(実務では予測期間5~20年とするケースが主流)。
したがって、ターミナルFCFは、一般的には予測期間の最終年度の予測値を「準用」して策定するということになります。そのため、そのままコピーして入力すればよいかというと、そうではなく、少し調整が必要です。以下の点に留意してターミナルFCFを計算します。
①設備投資額(固定資産取得額)は減価償却費と同額にする
企業の設備投資(CapEx)は数年に一度といった頻度で行われる場合があります。一方、減価償却費は将来の設備投資の貯蓄的な意味合いをもつともいわれます。
したがって、予測期間の最終年度の設備投資額が数年に一度の大きなものであった場合にその数値をターミナルFCFの算定に用いてしまうと、当該数値が毎年継続することを仮定しているのと同じになり、FCF予測を誤ってしまいます。
また、ターミナルFCFは基本的には成長なし(あっても微成長)を仮定しているので、ROICが一定と仮定すると資産額がFCF成長率とかけ離れて増加していく予測は非合理的であるということにもなります。
このことから、最終年度以降の設備投資は、減価償却して資産価値が下がった同額分だけ設備投資を行うという仮定を置くことで対処するのが一般的です。
②運転資本増減はないものと仮定する
基本的に予測期間の最終年度以降は成長なし(あっても微成長)として扱います。この場合、事業規模が変化しないことから、運転資本額は変化しないという仮定を置くことに合理性が生まれます。
よって、ターミナルFCFの計算にあたっては、原則として運転資本増減を0とします。
③ターミナルの法人税額は法定実効税率を基準に計算する
予測期間の最終年度の法人税額が仮に欠損金などの影響で低減しているような場合、その税率を将来にわたって適用するのは合理的とはいえないので、ターミナルFCFを算出する場合に用いるNOPLATを計算する際の税率は法定実効税率を基準とします。
ターミナルFCFは当該FCFが永遠に継続するという意味のFCFであるため、一時的に税率が低下している状態を反映させては計算を誤ってしまうからです。
なお、ターミナルFCFの根拠となるNOPLATについては、「1+永久成長率」を予測期間最終期(n年目)のNOPLATに乗じたものを用いる場合があります。これは、継続期間の開始年がn+1年目であることから、予測期間最終期より1年間成長したものとしてを表現しようという考え方です。