コングロマリット・ディスカウント(Conglomerate Discount)

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コングロマリットディスカウント(Conglomerate Discount)は、多角化戦略推進により企業価値が一部毀損されると考える経営概念で、サムオブパーツ(Sum of the Parts)分析で算出される事業毎の評価合算値よりも、多角化企業の一括評価額が下回る現象をいいます。

 

 コングロマリットディスカウントに関する解釈は、学者や実務家等の間で長年に亘り議論されるほど千差万別であり、スピンオフやその他の事業譲渡がコングロマリットディスカウントを解消する有効な手段であるとの説から、コングロマリットディスカウント自体が誤認であり存在しないとの説まである。

コングロマリットディスカウントを巡る議論

 一説では、実際に企業が多角化戦略を推進し、事業セグメントが増加した場合、内部資本市場の非効率性が発生し、資本効率性指標(ROIC等)の低下による価値毀損が起こるとの分析がなされている。

 

 また、コングロマリットディスカウントの発生原因を各業務の複雑化・多様化に伴う情報の非対称性と捉え、投資家が資本コストを高く見積もることにあるという分析も存在する。

 

 さらには、サムオブパーツ(Sum of the Parts)評価分析の際、類似会社の選定や収益マルチプルの算定自体に誤りがあり、比較可能とは到底考えられない企業データを利用していることでコングロマリットディスカウントが発生するが、理論的に適切なバリュエーションを実施すれば乖離は発生しないという分析まで存在する。

コングロマリット・ディスカウントに対する実務上の対処

 対象会社が2つの事業を行っている場合、買収者がそれらを一括して評価しようとするとコングロマリット・ディスカウントが発生することがあります。たとえば、借入や余剰資産がないEBITDAが5億円、市場マルチプルが5倍(EV=25億円)の会社があるとします。

 

 一方、対象会社の事業は2つで構成されており、A事業のEBITDAが2億円、B事業のEBITDAが3億円の場合、事業ごとに評価して合算するとどうなるでしょうか? 前提条件として、A事業の適切なマルチプル(たとえば、A事業のみを行う上場会社の平均マルチプル)が4倍、B事業は8倍であることに合理的な説明がつくものと仮定します。 

 

 この場合、対象会社全体のEVは(2億円×4倍)+(3億円×8倍)=32億円ということになります。つまり、全体を一括して評価すると25億円であるのに対して、パーツ(事業)ごとだと32億円と評価できたということです。

 

 このように、コングロマリット・ディスカウントが起こりうる場合(特に上場会社)は、売主側としては、事業部ごとのPLを整理し、買主が事業部ごとに正確な企業価値評価ができるような下準備をし、かつ、コングロマリット・ディスカウントが発生していることを指摘することは取引上、有効に働く場合もあります。また、会社全体を一括で評価した場合と、サム・オブ・パーツ評価を行った場合の比較等も行っておくと、交渉に有用でしょう。

 

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