キャッチオール条項(Catch-all Provision)
キャッチオール条項(Catch-all Provision)とは、M&A契約上の概念で、「売主が重要な情報の全部を正確に開示し、不実的又は虚偽的な説明・表示を行わなかったこと」を網羅的に表明し、買主に対して保証する条項です。代表的なキャッチオール条項として、「Full Disclosure Reps」と「”10b-5” Reps」が知られています。
当該条項は一般に、個別の表明補償条項で抜け漏れのある可能性を考慮し最終契約上に盛り込まれるもので、多様な法的意見の形成余地が確保されることで、買主の法的地位や交渉力が飛躍的に向上される効果を有します。
2000年代、アメリカのM&A市場(特にMid-caps)を中心にキャッチオール条項は普及しましたが、売主がM&A取引関連のリスクを過度に負担する実態が問題視されるようになり、現在、実務上採用されるケースは極めて限られています。
Full Disclosure Representations
代表的なキャッチオール条項として、「Full Disclosure Reps」と「”10b-5” Reps」が知られています。「Full Disclosure Reps」とは、その名の通り「完全開示の表明」であることから真の意味でのキャッチオール条項ともいえ、売主に幅広い責任を要求する内容です。Out-InのM&A(特に買主が米国企業)である場合は、非常に注意が必要です。
~Full Disclosure Repsの例文~
「売主は、本契約書又は開示別紙に記載されていない、対象会社の資産、負債、事業、将来性、財政状態または経営成績に重大かつ悪影響を与える可能性のある事実(ただし、一般的な経済または産業の状況は除く)を認識しておりません。」
”10b-5” Representations
「”10b-5” Reps」とは、アメリカのSEC規則10b-5の文言の一部を模倣し、M&A取引における表明保証条項に組み込まれるもので、現在においてもしばしば採用されるキャッチオール条項です。
一般的にM&A契約上の「”10b-5” Reps」では、アメリカのSEC規則10b-5の成立要件である「不正の意図(Scienter)」の立証が不要とされるため、不実的又は虚偽的な説明・表示があり損失が発生した時点で売主が補償責任を追求されることになります。
~Full Disclosure Repsの例文~
「本契約における売主の表明保証および開示書類における説明には、重要事実の虚偽の説明は一切含まれておらず、また、誤解を招かないようにするために必要な重要事実の開示を省略していない。」