チェンジオブコントロール条項(COC条項)
チェンジオブコントロール条項(Change of Control:COC条項)とは、組織再編行為や事業譲渡・譲受、重大な経営体制変更等を、契約解除事由、通知事由、期限の利益損失事由等とする規定です。「資本拘束条項」とも呼ばれます。
重要な取引先との契約内容・COC条項の重要性
「重要な取引先」との契約について契約書を確認のうえ、M&A取引実施に伴って契約解除等のリスクが発生し得ないかを十分に確認しておくことが肝心です。
また、買収者がこの「重要な取引先」の競合企業であれば、その買収者が対象会社を買収するに伴って「重要な取引先」との取引が解除されるまたは更新されないという事態に陥る可能性があると言えます。
この前提で「事業上重要となる契約に債務不履行事由がなく、またM&A後も有効に存在すること」というような表明保証条項を入れたままクロージングしてしまうと、最終契約の内容次第では売主が表明保証違反による補償責任を追及される可能性もあります。
なかでも、このCOC条項は重要な確認事項です。これは対象会社の支配権者が変わったり、対象会社が組織再編行為を行う場合等に、「当該契約の相手方はその意思で契約を解除できる」といった内容を定めるものです。
私宮崎が経験した事例でもM&A取引を契機として、「COC条項に基づいて御社との契約を解除したい。ただ、取引条件を優遇してくれるなら考える。解除されるよりいいだろ?」というようなニュアンスで、取引条件の変更を迫られたケースもありました。
COC条項の例
特に、継続的な対価を伴う顧客との契約、代理店契約、ライセンス使用契約等といったものによく見られますので注意が必要です。
(契約の解除)
第10条 甲(取引先)は、乙(対象会社)が合併又はそれに準ずる組織再編行為を行った場合または乙の現在の株主が保有する乙の議決権が50%を超えて変動した場合には何らかの催告なく、本契約を解除することができる。 |
M&A実務上のCOC条項の検討・対応方法
M&A実務では、重要な取引先との取引契約におけるCOC条項の有無とその内容を確認・整理した上で、M&A取引が先に進みそうな段階等適切な段階で、それらの調整方法を検討していきます。
たとえば、①通知義務だけのものは個別に通知する、②解除権が発生するものについてはあえて何もアクションを起こさない、③事前承諾が必要な場合には最終契約締結からクロージングまでの期間において承諾書取得を試みる……等と重要な取引先相手ごとに対処策を分けて考えていきます。