目次1 βの考え方の整理1.1 分散投資をすればアンシステマティックが消えるとはどういうことか?1.2 アンシステマティックを図で理解する1.3 分散投資をしていない投資家からみるとどうなるか? 本記事は、著者による『会社売却とバイアウト実務のすべて』(日本実業出版社、以下「本書」)の執筆において、紙面の関係上掲載できなかった内容を掲載した本書の追加コンテンツです。本書の250、272、294ページの続編としてのコンテンツであり、本記事単独では若干読みづらいこともありますが、ご容赦の程お願い致します。 前の記事では「不確実性(リスク)が高い場合は割引率も高くなる方向に影響する」ということが、相関係数が高い場合に分かりやすく理解できるという説明をしました。なぜなら、相関係数が低い場合は、トータルリスク(個別銘柄の標準偏差/市場指数の標準偏差)が打ち消されることから、個別銘柄の標準偏差が相対的に高いからといってβが高くならないからです。 ここでβの考え方をもう一度整理してみたいと思います。前記事でも申し上げたとおり、βという指標もリスクを表します。しかし、βリスクは単純にその投資対象の標準偏差(リターンのブレ)だけでなく、分散投資を十分にしている投資家からみたその投資対象のリスクを計測したものといえます。 βの考え方の整理 ここまで見てきてわかることは、投資家が持っているポートフォリオが市場指数と個別銘柄である場合、その個別銘柄のリスクが同じであっても、この2つの相関係数が低ければ低いほど、その2つを適当な組み入れ比率で組み入れを行った場合のポートフォリオのリスクは、効率的な組み合わせにすればするほど低減されるということでした。 逆に、相関係数が高ければ高いほど、如何に効率的な組み合わせにしてもリスクの低減効果が働かないといえます(というか効率的な組み合わせがない)。またβはこの分散投資によるリスク低減効果を考慮にいれた指標であるということも理解いただけるでしょう。ここまでわかってはじめて、以下の疑問に回答することができます。 βにはなぜ分散投資によるリスク低減効果が含まれているといえるのか、すなわち、なぜ「システマティックリスク」のみが反映されているといえるのか? (図1-3)や(図1-4)で描いた線分の意味をもう少し深くひも解いていきましょう。以下に(図1-3)と(表1-5)を再掲します。 ※ここでは、分散の計算材料として用いた「リターン」を%表記のまま、つまり30%であれば「0.3」として用いています。一方、多くの書籍では、おそらく、10%や20%などという数値を「10」「20」に置き換えて計算しており、面倒ですが、そのほうが分散>標準偏差となり分かりやすいです。例えば、リターンが20%なら「20」、-30%なら「-30」と%を省いた数値を用いて分散を計算していくと、分散としては約432という結果が出ます。これに%を後付けするわけです。しかし、√4.324%も20.8%、√432に%を付した数値も20.8%と同じ値となり標準偏差では変わらないため、標準偏差が正しければよいと考えてこう計算にしています。   … 続きを読む βの推計と相関係数、分散投資効果について 2
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